糖尿病エンパワーメント 「かなづちを捨てよ」

名古屋大学大学院医学系研究科地域総合ヘルスケアシステム開発寄附講座 岡崎研太郎 

www.jstage.jst.go.jp

 

糖尿病患者へのエンパワーメントに関する論文ですが、糖尿病に限らずさまざまな病気に共通する問題だと思いました。

もともとはAnderson.B博士 (Practical Psychology for Diabes Clinicians)という論文でしょうか。

「医療者は慈愛の心に満ち、親切で、問題があればときに代わりに解決しようとしてしまう。まるで釘が釘が一本出ていのをみつけると、かなづちを持って一本一本叩いて回るように。しかしこれでは患者はいつまでたっても自分で問題を解決する力が備わらず、問題が生じるたびに医療者に頼られければならない。医療者の真の役目は患者が自分で問題を発見し、自分で考え、自分で解決していく力を身につけることを支援すること。そのためにも自分がかなづちを持っていることを認め、いったんそれを捨てて、患者の話をじっくりきく。」

 

とても読みやすいので直接読んでいただくほうが早いですが、方法論として5つの段階が挙げられていたので紹介します。

 

1 患者の問題を特定する。「今心配なことはなんですか。治療の上で何が一番むずかしいとかんじていますか」
(有用な質問)

 

2 患者の感情を明らかにしていく。感情はしばしば行動で表現されるし、考えや感情が行動に大きな影響を与える。

「今飲んでいる薬についてどう感じていますか」「インスリンを打っていて困ることがありますか」「今の食事でつらいことはないですか? ずっと続けていけそうですか」

 

3 行動目標を作成する。その際、 未来志向の質問「5年後、10年後どんなふうになっていたいですか」「今後の人生でどんなことがやりたいですか」など 個別性を重視した質問(動機づけ面接の本人のやりたいこと)

 

4 行動目標をさらに具体的にして盛り込んだ計画を立てる。

「血糖値を下げるのに効果がありそうな方法(食事、薬、運動、注射)についてなにかご自分の考えはありますか」

「その方法を始めるのに何が必要ですか」

「誰か一緒にやってくれそうな人はいますか」など

 

5 振り返り
 「実際やってみてどんなことがわかりましたか」

 「計画通りできましたか」

 「できたことについてどう感じましたか」

 「うまくできなかったことについて どんなことが障害になりましたか」

 

依存症治療における動機づけ面接法で大切にされていることと同じで、本人がどんな生活を望んでいるか、迷いの受け止め、方法の提案、本人の選択、気持ちに寄り添うこと などであると理解しました。